今回は、eポートフォリオサービスPhollyをエンジニア視点で聞いてみたいと思います。
エンジニア
祖川
- まず最初に開発がスタートした時のことを教えてもらえますか?
祖川:現在の販売パートナーである日本事務器さんからeラーニングシステムLearnOについてお問い合わせをいただいて、話が始まりました。当初はeラーニングシステムをうまく大学、高校、小学校といった文教向けにうまくカスタマイズできないかという相談だったんですね。
でも、どうも法人向けのeラーニングシステムと文教向けは根本の思想が違っていました。そこがわかっているのに無理にカスタマイズしてもいつか破綻するだろうと感じていました。ですから、Mogicとしては思い切って一から新しいサービス作りませんか?と打診した記憶があります。今思うと結構思い切ったことをしましたが、まだ会社が小さかったですし、100年の歴史がある日本事務器さんが積極的にきてくださったことが大きかったですね。
- Mogicが作ったサービスを日本事務器さんに販売いただくという流れかと思っていました。しかし実は、両社の話し合いから新サービスの芽が出たんですね。
祖川:はい、ですから本当に何もないところから議論して作っていきました。日本事務器さんに信頼していただくためにも、スモールスタートでできること、つまりプロトタイプを作ったわけです。やっぱり動くものを触っていただかないと、Mogicの良さが分からないわけですから。
デザイン1か月、開発1か月という短期間で現在のPhollyサービスのプロトタイプを作りました。ファイルをアップロードして蓄積し、他のユーザーと共有するという基本機能だけでしたけど。そこで、eポートフォリオからフォリオをいただいて、Pholly(フォリー)という名前がつきました。
- 話し合いからプロトタイプまでかなりスピーディですね。
祖川:プロトタイプができてからは、日本事務器さんの社内プレゼンや教育ITイベントEDIXへの出展を通して意見を集めました。プロトタイプですから、たくさんフィードバックをもらわないと進化できないんです。
そうしているうちに、やはり「自分で調べてまとめて成果物ができる」「それを誰かに見てもらってフィードバックしてもらい、さらにクオリティを上げる」ループがオンラインでできるといいんじゃないかと気づきました。自分の学びの軌跡じゃないけど、振り返れるものがあれば自信にもなりますし。「自分、結構やってきたな」って。
- ファイルのアップロードや共有の機能はストレージサービスに近いように感じましたが、「受講者のためにどんな価値が出せるか」の視点からサービスの方向性が決まったということですね。
祖川:管理画面とユーザー画面があるのですが、それぞれこだわったポイントがあります。学生と先生がメインのユーザーになりますが、話を聞けば聞くほどどちらもすごく忙しい。すでに忙しいのに、さらにオンラインサービスを使いこなすほどの手間も時間も取れなそうでした。
つまり、できるだけハードルを下げる必要があったんですね。サービスを使いこなすまでに時間がかかるようだったら、使われないだろうと。そこで直感的に分かるようにして、ゴールまでの操作数をできるだけ下げるようにしました。
ファイルはドラッグアンドドロップでアップロード、共有ボタンですぐに共有、レポートやグループワークの画面でも簡単なチャットできるとか。提出したものが先生から差し戻されたり、評価されたらすぐに通知がきますし。とにかくハードルをできるだけ低くするのが最初にこだわったポイントかと思っています。
- 管理画面でのこだわりはどこにあったのでしょうか?
祖川:管理画面は権限ごとにできることが重要なので、できるだけミスが起こりにくいようにしています。うっかりボタンを押して、ユーザーのレポートを削除してしまったら大変なことになります。ユーザー画面の使いやすさとは違う、リスク管理を考えた使いやすさといえばいいんでしょうか。
そうしてたくさんのフィードバックをいただいて作り込みながら、日本事務器さんの営業力があって、最初から学習塾や大学でお問合せをいただくようになりました。
- どのような導入を希望されていたのでしょう?
祖川:大学は学部によって進め方が違いますから、大規模に入れるニーズより一つ一つの講座や研究室に入れていく小回りが評価されましたね。他社と比べてすごく安い価格設定ですし、小規模で期間にも融通がききます。
- そこがちょっと不思議に思ったところです。eラーニングシステムLearnOも業界最安値帯ですし、なぜリーズナブルな価格で提供できるのでしょうか?
祖川:一つにエンジニアリングの工夫があります。
システム全般に共通すると思うのですが、設計思想の複雑性をどこまで考えるかということですね。複雑に考えることで、機能が増えてより多くの人が満足できて良さそうにみえます。
その一方で使い方が分かりにくくなるし、システムの改修にも手間がどんどんかかってきます。ユーザーから頻繁に問い合わせがくるようならサポートチームにも負荷がかかる。
だから、あえて複雑な機能を精査してそぎ落とし、シンプル性を目立たせることにしています。シンプルということは作りがどんどん簡単になっていくわけで、それが単純にコストを抑えることになっていますね。エンジニアリングのところですでに価格感を意識できてないと、トータルで積み重ねて割高になります。
複雑にしないという気持ちがシンプルな設計になり、シンプルな開発ができて、あちこちの手間が削減されているのがリーズナブルな価格で提供できる秘訣じゃないでしょうか。さらにその結果、学生や教員も直感的に使えるサービスになると考えています。
-シンプルにすることで、作る側、サポートする側含めた全体の手間を総合的に少なくできるということなんですね。分かりやすいです。
- 続いて、Phollyを検討される方に向けて「これが便利です!」というオススメの機能はありますか?
祖川:最近リリースされた機能からいくと、出欠機能やテスト機能が便利です。大学向けだとやはりアンケート機能かなと思います。
- 人数が多かったりするとアンケート機能は便利そうですね。
祖川:すごく使われている大学があり、講義の終わりにアンケートを毎回実施しているようです。アンケートの提出状況をうまく活用されてるんですね。学生がアンケートに回答するというアクションで、出席状況を見たり、講義のフィードバックをもらえたりできますから。
教員が講義ごとにその場でアンケートを作り、目の前の学生が書き込むというフローが出来上がっているため、非常にうまい活用法だと感じています。
- それは上手ですね。大学や教員はそういうコミュニケーションを記録として残すところで苦労されてそうですから、いいですね。
-シンプルさを保つ以外にこだわりというのはありますか。エンジニア個人としての感想でも構いません。
祖川:ユーザーの快適さですね。ごく簡単にいえば、ページを表示するスピードが大きいです。Phollyは意外にもあちこちページの遷移を非同期で行っているんです。ブラウザのページの読み込みが少ないのがポイントですね。
ユーザーがページ遷移でモタモタしないようにしてます。そこがうまくいくとページがすごい軽く感じるんです。
-あとお聞きしたいのはセキュリティです。Phollyは大学でやりとりされる重要書類が保管されています。クライアントが最後に気になるのはセキュリティやバックアップ体制じゃないでしょうか。気をつけていることを教えてください。
祖川:大学の講義を受けている人しか見られないファイルがありますね。このユーザーはダウンロードできて、このユーザーはダウンロードできない。このユーザーはファイルの内容を確認できて、このユーザーはファイルを確認できない、というような。そこを間違うと情報漏洩になります。ですから、ファイルのアクセスコントロールは特に気を付けています。
また当然サーバのセキュリティは大事で、無駄にポートを開けませんし、しっかり壁を作って切るところは切っていきます。チームで権限を絞り、システムの監視を続けています。
-万が一の対策としてバックアップはどうでしょうか?大事なファイルなのですごく気をつけられていると思います。
祖川:もちろんバックアップは定期的に取っています。バックアップから復旧する手順は事前にチームで作ってあります。
-Phollyをシンプルに設計して運用していると思いますが、改善はずっと続けていますよね。それはどういう形で進んでいるのでしょうか?
祖川:週1回、プロジェクトの定例があります。そこでお客さまから問い合わせのあった内容というのをシートにまとめていますので、プロジェクトのメンバ全員でこれは修正しよう、これは検討だねと判断して改善に進みます。
- 実際に使われているお客さまからの要望が毎週取り入れられて、本当にどんどん使い勝手が改善されていくんですね。
祖川:問い合わせをすぐに棄却することはなくて、全てシートにまとめていって、全体定例で全てのメンバが見て考えるという流れです。
- 販売パートナーの日本事務器さんからの要望で修正することもあるのでしょうか?最近実装したものがあれば教えてください。
祖川:日本事務器さんが非常にPhollyを触ってくださり改善リストが結構多くたまっているので、優先順位に沿って次々にやっています。
最近だと日本事務器さんから相談を受けて、学認(GakuNin)での認証を実装しました。SSO、SAML、LDAPといった認証を導入している大学が多く、中でも学認が大学でデファクトスタンダートになっていましたので。
-本当に日本事務器さんがお客さまにすごく近いところにいらして、いろいろ情報を共有してくださって、うまく取り入れられている。そういうパートナーシップなのですね。
- 小さな改善をやりながら、メジャーアップデートも年2回はしてますよね。随時改善に対応しながら、メジャーアップデートも定期的に実施していく。それを10年続けてきたというのはなかなか大変じゃないかと。エンジニアからみて秘訣はあるのでしょうか?
祖川:実際にPhollyを触ってみて、自分が大学生だったときを思い出すんです。そういったときに、ここはこうしたほうがいいなとか。自分の過去と、現在提供しているサービスがつながってきて、モチベーションになっていますね。大学生だったときの経験をPhollyに反映しているみたいな感じです。
- ありがとうございます。では、最後に今後のPhollyに対する意気込みをぜひ聞かせてください。
祖川:Phollyは10年前から始まって、最初はファイルのアップロード機能をメインとしたeポートフォリオサービスだったんですが、そこからアンケート機能や評価機能、動画機能、テスト機能、自己振り返り機能、出欠機能……… 本当にたくさんの機能が付きました。
これからもどんどん軽微な改修やメジャーアップデートは続けていきますが、シンプルな作りを意識しつつ、最大限、学生と教員が使いやすいサービスであるように開発していきたいと思っています!
- 大量の質問でしたが、長い時間インタビューをありがとうございました!
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